ファントムは蠍座。
クリスティーヌは乙女座。
彼女の美しさや声の才能の豊かさや音楽の才能に惚れ、暗く閉ざされた彼だけの世界に彼女を引き込もうとするファントム。
音楽の師であるファントムに従順でいようとするクリスティーヌ。
ファントムの孤独で歪んだ愛。
けれど強く純粋な思い、そして心。
残忍さ。激しさ。悲しい境遇による傷。
それを目の当たりにしたクリスティーヌは、
Angel of music、音楽の天使、ファントム、である彼の人間味に触れるのだ。
彼の心の奥に巣食う闇と彼の音楽の世界が渦となってクリスティーヌをオペラ座の地底へと引き込もうとする。
現世と彼との未知の世界との狭間でクリスティーヌはファントムの書いた譜面を歌う。
悲しみ、愛、欲望、孤独、心の繋がり、
2人の間には絆があったのではないかと思う。
幼い頃から身寄りがなく、顔に酷い火傷を負い見せ物小屋でボロ布を顔に被り生活していたファントム。
それに対し、踊り子として幼い頃からバレエを習い美しい声と若さ、澄んだ心の持ち主であるクリスティーヌ。
彼女には良家の許嫁もいる。
そんなファントムの孤独を癒していたのはクリスティーヌとの音楽のレッスン。心のやりとりだったのだ。
オペラ座の地下に広がるファントムの暮らす秘密の場所のように、2人を結びつけた音楽は広大で深く謎に満ちている。
見た目も、出生も、過去も、その全てを音楽は包み込み慈しみという人の心の芯にある愛を浮き彫りにする。
その瞬間、そのひと時だけが永遠であり、2人が一つになれる瞬間なのである。
クリスティーヌはファントムの手を振り払い、現世へと戻ることを決断した。
ファントムは地底のほとりにある、秘密の音楽の間の大きな鏡を割り、永遠に続く闇へと姿を消した。
この地底の真上、地上にある荘厳豪華なオペラ座はファントムの怒りの炎に焼かれ、焼け跡となった。
この大火事の後、彼を見たものはいない。
彼は何処へ消えたのだろう。
彼の残した譜面は幻となって消えたのだろうか。
もう戻れない。戻らない。
ファントムとクリスティーヌの心のやりとり、音楽の世界は何処へ消えたのだろう。
永遠の悦びの世界は何処にあるのだろう。
今はファントムの作り出した楽曲だけがそれを蘇らせる。
クリスティーヌは夜に1人歌うだろう。
まだオペラ座が焼かれる前の日々、月夜の寮の階段を思い出しながら。
姿を見せず、声だけのファントムと歌ったその曲を。2人が奏でた音楽は永遠に眠り、オペラ座の地下に響き続けるだろう。